お腹の中でプチンッと何かが弾けた
胎動を感じたのがいつだったか定かではないのだが、確か一般的に言われているよりも少し遅めだったと思う。
生まれてきてこれまでにお腹の中で子供を育てたことなどないから胎動と言われてもどんな風に感じるものなのか全くピンとこなかった。
あるとき、お腹の中で何かがプチンッと弾けた。
あれ?とは思ったものの、気のせいかと思う。
翌日にも、また何かがプチンッと弾けた。
なんだなんだ?お腹の調子が悪いにしてはプチプチいってる。お腹が痛いわけでもないし…。
その後数日経ってもお腹の中でプチプチと弾ける感覚が続いた。
周りの出産経験者に聞いても
「プチプチは言わなかったよ。もっとぐにゅって動く感じ」
と言われるし、一体これはなんなのか…と思っていたら、胃か腸がぐにょんと動く感覚がし始めた。
あ…これが胎動か…。
やっと、お腹の中に誰かがいることを自覚出来た瞬間だった。
他の人には違うと言われたけど、私はやっぱりあのプチプチプチンッは胎動の始まりだったと思っている。
胎動が始まると、本当に自分の中で別の命が成長しているのだなと実感出来た。
胎動は徐々に強くなる。元気いっぱいに動くようになると仕事中の集中力が落ちて困った。
素知らぬ顔でパソコンに向かっていてもお腹の中の人はドンドン蹴っ飛ばしてくるし、手でこちょこちょしてくる。うわぁって体をよじりたくなるようなくすぐったさもあるけれど仕事中だ。素知らぬ顔でパソコンに向かった。
妊娠中は初めてのことばかり過ぎて、周りの経験者の言葉も、お医者さんや助産師さんの言葉も、どうもピンとこないことがたくさんあった。
「胎動はありますか?」
と聞かれて何度
「胎動がどういうものかわからないのですが」
と答えたことか。
実際にわかるようになると、今度は動かないと不安で不安で仕方なくなる。
あれ?今日おとなしいな。どうした?おーーい?元気ですか〜〜?
そんなことを思いながら何度お腹をさすったことだろう。
お腹の中に赤ちゃんがいて、こちらの都合とは関係なく勝手気ままに動いてる。
あの日々は幸せだったなぁ。