みずたま色の空

こどもやごはんや日々のこと。

破水の記憶(切迫早産)②

妊娠8ヶ月に入ったと思ったらある朝突然破水してしまった私。そのまま緊急入院となった。
昨日は破水してから病院までを書いたので、今日は入院し始めのことを書こうと思う。


28週6日で破水した私。明日は土曜日だから始めて赤ちゃんを迎える準備に取り掛かろうとしていたときだった。

股から流れていく生温かい水のようなもの。

パンツを真っ赤に染める鮮血。

28週で破水するということがどういうことなのかわからなかったけれど、無事とは言い難い時期だろうと思った。ただひたすら、お腹の中に向かって、
「まだだよ。まだ早いよ。かなりフライングだから、まだ出てこないでね」
と祈るのみ。

病院の外来で内診を受け、羊水が出ているのかの検査もして、破水だと断定された。
家からつけてきた夜用ナプキンはしっかり濡れていた気がする。血も出ていたけれど水分で薄まっていて、朝トイレで見た真っ赤な血ではなかった。

先生の指示で車椅子が用意され、車椅子に乗って病棟に移動した。思えば人生初の車椅子だった。

病棟に着いて通されたのは陣痛室だった。私が入院&出産した病院は、入院用の病室と、陣痛室が3部屋くらい、分娩室が1つに分娩台が2つあってカーテンで仕切られているという作りだった。
一番奥の陣痛室で横になった。ベッドの上で足を高くして寝る。これ以上羊水が出ないように、足を高くしていた。
病院で用意してくれた産褥用の下着と、夜用ナプキンの倍くらい大きくて分厚い産褥用のナプキンをつけた。絶対安静でトイレにも行けないので、尿を出すためにカテーテルもついた。
妊娠出産は病気じゃないとはよく言うが、トラブルが起きれば病気と同じだと思う。入院するし、絶対安静にもなるし、トイレも行けなくなるのだ(大以外は)。

このとき初めてお腹にモニターというものをつけたような気がする。モニターは赤ちゃんの心拍やお腹の張り状況をチェックするもので、赤ちゃんは元気そうだった。張りについては覚えていない。

覚えているのは、先生が焦っていたこと。助産師さん達の緊迫した表情。普段外来で診てくれている担当医以外の先生も現れて皆真剣な表情だ。その雰囲気で、28週の破水は大事なのだと理解した。
先生と助産師さんから状況の説明を受けた。

通常破水すると24時間以内(多分)に陣痛が始まる。
子宮内はクリーンルームのようなもので普段は赤ちゃんが羊水の中で守られているが、破水したということはどこかに穴が開いている。48時間以内に出産しないと、子宮内に細菌が入ったりして赤ちゃんが危険な状況になる。
この病院では32週以降の赤ちゃんしか入院出来ないため、今ここで出産した場合別の病院(高速道路を使って1時間くらい)に救急搬送することになる。
その病院は子供しか入院出来ないため、産後の私は別の病院に入院するしかない。
そうならないために、28週の妊婦を母子ともに受け入れてくれる病院に転院した方がいい。車で30分の日赤と、高速使って1時間の大学病院のどちらか。
ただし日赤では私の病気を診ることが出来ないため、私に何かあったときのためにこの病院で連携をとる。大学病院なら母子ともに診ることができる。
今赤ちゃんが産まれると、まだ未熟なため長期入院になる。
まれに破水した穴がふさがって妊娠継続出来ることもある。ごくまれな話なので転院は考えた方がいい。
さあ、どっちの病院にしますか⁉︎

とのことだった。


私は勝手に心の中で
「まだ産みませんけど!フライングですけど!」
と思いつつ、お腹の子にも伝えつつ、夫と相談して近い方の日赤に転院したいと伝えた。
私の病気について診てもらえない不安はあったけれど、もし今産まれて赤ちゃんが長期入院になったときに、産後の体で高速通いをすることの方が不安があった。そもそも、事情をよくわかってくれている担当医がいない病院に行く時点で不安だ。
結局その日のうちには日赤の都合がつかず、そのまま陣痛室で夜を迎えることになった。日赤のベッドに空きが出ないので転院出来ないとのことだった。
転院について助産師さんと先生がやりとりしている内容を聞いているだけで、日赤は先生達も忙しくてバタバタで受け入れる余裕はなさそうということがわかり、そんなところに飛びこむのは嫌なのでなんとか持ちこたえられないだろうかと考えていた。

その日の夕食はミートローフだった。美味しい。この食事はなぜかよく覚えている。
ご飯なんてどうでもいいよと思っていたけれど、もし出産になった場合は体力が必要だからできるだけごはんはちゃんと食べてくださいと言われた。

連絡を受けた私の父が駆けつけた。
「なんでこんなことになってしまったんだ」
と悲壮感たっぷりの顔で打ちひしがれている。
義理の母から夫に連絡があったようだ。義理の母は遠方に住んでいるため駆けつけることはできない。

どうしてそうなったのか、さらしを巻いていなかったからではないか…。原因は何か?

色々な声が聞こえたけど、私の気持ちはただ一つ。

原因追求はやめて。誰も望んでこの状況にしたわけではない。
それよりもただただ、赤ちゃんが無事でありますように。

誰と話していても、食事を取っても、神経はずっと下腹部に向かっていた。羊水が流れ出るのを全身の毛が逆立つくらいの集中力で察知して、止まるように、少しでも多く出たらすぐ助産師さんを呼べるように、どうか無事であるように。

そして結果的に、
「まれに破水してもふさがって妊娠継続できることもある」
の、まれが起こって、私はここから2ヶ月弱の入院生活を開始することになるのだった。