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みずたま色の空

こどもやごはんや日々のこと。

ただただ悲しいことがあったなら私はきっと川に来る

通勤電車の中、普段はスマートフォンで何かを漫然と見ていることが多い。

だけど1ヶ所、とても好きな景色があって、そこを通るときは顔を上げて外を見る。


そこには大きな川があり、川の向こうに山がある。

水はゆるやかに流れている。

雨が降れば濁った濁流になり、穏やかな気候が続けば空を写してそこにある。


川が好きだ。

子供の頃から川はそばにあった。

小学校へは大きな橋を渡って通っていた。毎日見る川だった。

休みの日には山の小さな川辺で遊んだりもした。巨大な鹿が川沿いで死んでいたことをハッキリと覚えている。
夏の暑い日だったが川の周りは木陰で涼しく、鹿は少し下流の川辺に横たわっていた。

小学校の裏山には細い細い小川があって、石をどかすと沢蟹がいた。友達とワイワイ言いながら沢蟹を探して小川を遡った。


中学校は川のすぐ横にあって、大嫌いなマラソンや体力作りのジョギングは土手を走った。嫌で嫌で仕方なかった。

夏には花火大会が川で行われ、水面に火花が映った。


高専の3年生くらいのとき、専門科の授業でOB訪問があった。土建業で勤める卒業生を訪ねて、その人が担当している現場を見学した。

連れて行かれたのは工事中の川だった。

川底から護岸まで工事中のその川はすでに水が流れており、コンクリートでガチガチではなく、大小の石が配された一見自然な川だった。少なくとも私には作られた川には見えなかった。

自然に見えるその川は、災害が起きぬよう設計され、川の流れ、流れの緩急、動植物の生態、地域住民の暮らし、そういうものが考えられた上で作られていた。

石の配置は川の流れと魚の居場所を作る。川底にも魚の住処になる大きな石の入ったカゴが設置されている。子供が遊べる浅瀬がある。植物が根をはる護岸がある。

自然に見える川が、実は綿密に設計されて作られていたなんて!!

その衝撃は高専時代で一番と言っても過言ではなく、水理学は苦手なのに水理の研究室を卒研に選んだほどであった。

そして就職活動でも、河川に関わりたくて、河川関連の仕事をいくつか受けたのだった。受からなかったのだけど。


川が好きになると、橋も好きになった。

その2つを見ると、とても心が落ち着く。安らぐ。

疲れもすうっと抜けていく。


通勤電車の中、窓の外を見るたびに、ただただ悲しいことがあったなら、私はきっと川に来るなと思うのだった。

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