みずたま色の空

こどもやごはんや日々のこと。

出産が不安、産むのが怖いあなたへ

近所に住む知り合いがそろそろ初めての出産をする。

ぐんぐん大きくなるお腹の中にいるのは男の子だそうだ。

旦那さんがお腹の中の子供と奥さんを溺愛しているのが見ていてよくわかる。

そして彼女はとても不安そう。会うたびに不安だ不安だと言っている。産むのが怖いと。

私は妊娠するまで産むのは死ぬのと同じくらいの恐怖だと思っていた。というよりも、死ぬのはまぁ誰でもいつか訪れるものだから仕方ないとして、産むのは産まない人生もあるから経験しなくても済む恐怖として自分には無いことにしていた。

しかし娘がお腹にやって来た。

まさか!という気持ちと同時に、

「もうお腹にいるなら後はしっかり守って育てて産むしか無いわな」

という気持ちに切り替わった。

お腹にいるなら産むしかない。ずっとお腹で育てるわけにはいかないのだ。

そう思えたら怖さはなくなった。


出産を控える彼女のお母さんは子供を4人育てながら農業をやってきたかっこいい肝っ玉母さんで、私も自分の母のような気持ちでお世話になっている。

私達の親世代、県外から嫁に来る、義両親との同居、子育て…。私には到底耐えられない辛い思いをたくさんしながら、笑顔いっぱいに子供を育ててきた大先輩。

大先輩の出産話の中で、どうにも忘れられないのが帝王切開だ。

当時は今のような医療技術はない。
帝王切開の後はベッドに横になったまま動くことは許されず、子宮の伸縮を促すためかなんなのか、お腹の上にずっしりと重い砂袋を置かれていたという。その痛みと重みは壮絶だったそう。

そんな話を聞いたら出産が怖くなるのも当然といえば当然。一方、そんな思いをしても産んで育ててくれた親のありがたさもきっと感じているだろう。


出産前に不安な人はたくさんいると思うし、不安なのは不安でいいと思う。

ただ、

「私が産まなきゃ」

と思っているならそれは少し違う。

本当に不思議だけど、出産は「子供が産まれてくる」のだ。


「そろそろ外に出ようかな」

と思うかどうかは知らないけれど、ある時子供が生まれる体勢になる。同時に陣痛が来て、子供が産まれる気になったことを教えてくれる。

陣痛は、

「あなたの赤ちゃん、産まれる気になりましたよ〜」

の合図だ。


陣痛は痛いから、あれこれ考えてる暇なんてないと思う。入院中に陣痛室にいた日が2・3日あったので何人かの出産の声を聞いたけれど、そりゃもう叫んで叫んで大変なことになっている人もいた。

あまりに痛いから、もう帝王切開に切り替えて!というのもよく聞く話。痛いからだけでは切り替わりませんが。


出産は赤ちゃんが出て来ようとするのを母親が全身全霊で応援するものだ。

私達は激痛に耐えながら、産まれようとする我が子を応援しているのだ。

その間に赤ちゃんはくるりと回りながら出てくる。どこでどう教わったかわからないけれど、不思議なもので産まれ方を知っている。

出ようと一生懸命になっている赤ちゃんを精一杯出やすくしてあげるのが激痛の陣痛で、いきむのは赤ちゃんが出てくる最後のところを

「でてこーーーーーい!!」

の勢いで応援するものだ。

産まれ方を知ってるんだけどちょっと向き間違えちゃった子や、細い産道を通るには元気が足りない子、2人以上でお腹の中に待機してる子、お母さんの応援パワーが尽きそうなときは帝王切開になる。

経腟分娩(下から産む)でも、医療スタッフの方たちが応援してくれる。


出産は、産まれようとする赤ちゃんをお母さんが全身全霊で応援し、産まれる道をつくり、医療スタッフの皆さんがそのお母さんと赤ちゃんを応援して、赤ちゃんが産まれてくるものだ。


お母さん1人で産むのではない。赤ちゃんがお母さんと協力して産まれてくるもの。

だから、1人で産むことが怖い人は、お腹の赤ちゃんと協力するんだと知っておいてほしい。1人じゃないから。

前に助産師さんが言っていた。

「赤ちゃんにとって出産って、人生最大の難関なんですって」

赤ちゃんは猛烈に頑張って産まれてくるのだ。



ちなみに私の出産のときは、極力声を出さずに産むことに集中していた。

あまりの激痛に唸り声とかでちゃうのだけど、

「いたーーーい!もうむりーーーー!」

とかは言わなかった。

痛いからと大きな声を出していると、産むための大事なチカラが抜けてしまうと聞いたことがあった。声を出すチカラがあるならそのチカラでいきみなさい!と。
自分の体力に自信がなかったから、チカラはちゃんと使いどころを考えないとと思っていたから声は出さないようにした。

2回目にいきんで、あと少し!!となったとき、

「次産まれますよ!次のいきみでお腹押します!」

助産師さんやお医者さんから声がかかり、私が

「くぅぅぅ〜〜〜〜っっっ!!!!」

といきんだら、助産師さんが「いいよ!いいよ!」と声をかけてくれて、先生がお腹を思いっきり押した。私の子供を出してあげるチカラが弱って来ていたから、みんなが助けてくれたのだと思った。

そうやって娘が産まれた。

娘は、何より本人が一番頑張ったし、私や、医療スタッフさんや、付き添っていた夫や父の応援で産まれた。


出産が不安な人へ。

赤ちゃんがやってきたその日から、あなたはもう1人じゃない。
お腹の赤ちゃんの、人生最初で最大のかもしれない頑張りを、全身全霊で応援しましょ。